1-18 金沢の廃温泉旅館

僕はこのサイトを始めた当初は、まさかこの物件を取り上げることになるとは思ってもみませんでした。
今回紹介する物件は、本来廃墟となってはいけなかった建物です。
北陸の温泉地にある高級旅館ということで、知っている人も多いと思います。
この温泉旅館を舞台として、2000年夏ごろから暗い話題が飛び交いました。
北陸の地方新聞で2度にわたって社会面のメイン記事として掲載されています。写真も交えてお読みください。

2002.11.11 リニューアル! ここからどうぞ!

湯涌温泉 旧「白○楼ホテル」 本館、貴賓館

 湯涌温泉は、金沢市内から山間に入った、こじんまりとした温泉地です。金沢市内から最も近い温泉地の一つで、金沢市内を観光した人が、この温泉で泊まることが多いのですが、最近は宿泊客も少なくなったようです。
 白○楼ホテルは、湯涌温泉内に昭和7年に誕生しました。温泉旅館としては珍しい、北欧と南欧の建築様式を取り入れたリゾートホテルで、その貴重な建物は全国的にも有名になり、「東洋一」とも言われ国の登録文化財にも指定されました。全盛期には昭和天皇、皇后が食事をされたこともあり、湯涌温泉の看板旅館として定着し、同温泉まで運行される路線バスも「白○楼ホテル前」というバス停を設けて湯涌温泉のバス発着場にしていたほどでした。
 しかし、平成10年3月、白○楼ホテルは突然閉館となりました。経営不振が原因だったようでしたが、閉館直後は館内の絵が盗まれたり(元従業員に容疑が集まりました)など暗い話題が続き、再建は絶望的になりました。それでもこれだけの由緒ある建物ですから、湯涌温泉の新しい名所として、白○楼ホテルは今後も大切に残されていくんじゃないかと作者は考えていました。
 ところが、現実はそんなに甘くはなかったようです。平成12年8月13日の新聞紙上で、こんな記事が掲載されました。

記事内の写真をクリックすると、大きな写真が見れます(2カット)。

 旧「白○楼ホテル」の実情は想像を超える荒廃ぶりのようです。記事の要所を見ていくと、
1:関係者以外の立ち入りを禁ずるために、高さ5メートルのバリケードを設けたが、その一部がこじ開けられて、何者かが館内に侵入している。
2:館内で肝試しや花火をしている若者が実際にいた(どうやら夜間ですね)。
3:本館、貴賓館とも、窓ガラスがほとんど割られていて、2階の窓も開けっ放し、備品が外まで持ち出されて散乱している。
4:観光協会関係者が、夜間巡回をしているが、集団の若者相手では、なかなか注意ができない(要するにヤンキーかヤンキーまがいのガキどもでしょう)。
5:破産管財人は東京におり、金沢市に建物の買い取りを求めている。買い取りの交渉が決裂した場合、管財人は建物と土地の所有権を放棄すると伝えている(これは、私はこの建物はもういらないと断言しているも同然ですね)。
6:管財人が所有権を放棄したら、この建物の管理は元の経営会社に戻ることになる。しかしこの会社はすでに倒産しており、したがって旧白雲楼ホテルは管理者不在の状態が今後も当分続くと予想される。

 こんな感じです。とんでもない連中です。このままそっとしておいたら館内も自由に見物できる時が来たかもしれないのに、これではぶち壊しです。建物内で花火をするなど言語道断歩行者横断(おやじギャグ)!記事では「火災の不安におびえている」と結んでおり、季節は真夏、関係者は皆最悪の事態を想像していたのでした。
 そして9月、恐れていたことが起きました。9月3日の新聞でこんな記事がありました。

記事内の写真をクリックすると、大きな写真が見れます。

 やはり火事騒ぎが発生しました。記事の概要は、
1:消防署員の巡回中、本館1階ロビーのスプリンクラーが作動しているのを発見。建物内には入れないため(管財人の許可が必要)スプリンクラーのバルブを止めて応急処置をした。
2:後日管財人立会いで調査をしたところ、ロビー内に燃えたダンボール、ジャンパー、椅子の跡が見つかったため、警察に通報した。警察は放火と建造物不法侵入の疑いで捜査をはじめた。
3:管理体制の強化として、バリケードの補修や新設、割れた窓ガラスをベニヤ板で補修した。警備会社とも連携して警戒態勢を続ける。
4:観光協会事務局長は、「不法侵入者には警察とも連携して厳しく対処する」と話している。

 廃墟ファンにはまずい事態になりました。これでは夜間は近づくことすら許されないし、昼間も遠目から眺めるくらいしかできないでしょう。館内を探索したかった作者には非常に遺憾であり、残念です。


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