1-66 石川県加賀市片山津温泉の廃墟群

急速な変貌を遂げる片山津温泉ゾーンのネタです。

2008年秋と2009年夏に作者単独で再訪しました。そのレポートはこちらです。

作者:これはかなり遅れた感が強いが片山津温泉を探索したときに見つけた小物件をまとめて公開するぞ。
助手:新聞でもちょくちょく記事にされていますね。温泉旅館の淘汰が進みましたから。
作者:平均すると年に1件は廃業していたからな。
助手:今回は先輩が案内役ですね。
作者:そうだ。廃墟伝説の黒魔氏一行が北陸地方の廃墟探索で訪れるということだったから、比較的地理に詳しいダイゾウさんが案内役、俺はそのサポート役としてな。自家用車数台に分乗して、効率良く回った。多人数での探索だったので、テンションが上がったぞ。
助手:(写真を整理しながら)ふーん、今回は潜入した物件が一つもないですね。これだけ人数がいたのに、遠慮したのですか?
作者:失礼なことを言うな。今回は短い時間で多くの物件を見たいという希望に合わせたのだ。
助手:広く浅くということですか。それじゃ今回はこれらで一まとめにして公開ですね?
作者:ちょっと多い気もするが、やむおえないな。

今回は、北陸廃物紀行のダイゾウ氏、廃墟伝説の黒魔氏、MUHAのWebサイトのMUHATYU氏、他合同探索希望者との合同探索となりました。廃屋にっぽん周遊では最多人数での探索となりました。

北陸自動車道片山津I.Cから温泉地に向かったのですが、遠くに見える温泉街を見た黒魔氏は、その寂れっぷりに感嘆し、「この廃な感じは、和歌の浦を超えるかも」とコメントしています。バブル崩壊、レジャーの多様化の影響をまともに受けた片山津温泉は、肥大化した施設を維持するだけの宿泊客を誘致できず、実に約1/3もの温泉旅館が廃業に追い込まれました。後継の経営者はなかなか現れず、一部ホテルの建物は侵入者によって荒らされ、そんな荒廃した温泉街を敬遠してさらに宿泊客が減少して…という悪循環に陥りました。
こうした状況は旧態然としたシステムを全面的に見直し、徹底した合理化を進めた新システムの宿泊施設が一定の評価を得て温泉街は少しづつ活気を取り戻しつつあります。しかし、こうした後継の温泉旅館は県外資本のものばかりで、地元の人間である僕としては手放しで喜べないところもあります。今後は加賀市や石川県が本気で温泉街の活性化に取り組む必要があるでしょう。

1.片山津パークホテル

現在は営業を再開しています。

 

 
北陸自動車道片山津I.Cから片山津温泉までの道中で
営業を止めたらしいビジネスホテルを発見しました。

この物件は僕もダイゾウさんも予想外で、急遽調査を開始。
建物はまだキレイで、この写真ではまだ営業しているように見えます。

しかし営業はしておらず、玄関周辺には雑草が生えていました。

併設するレストラン「笹舟」も営業を止めていました。

ホテルの備品でしょうか?椅子が打ち捨てられていました。

いかにも後付けしたらしい露天風呂の設備。
お湯は涸れ、少々荒廃していました。

「大」露天風呂を謳っていますが、それほど広くはありません。

非常口のドアから覗いたホテルの内部。
全く荒らされた跡がありません。すぐに再開できそうですね。
この予想通り、数年後ホテルとして営業を再開しました。

2.ホテル○月 湯女殿

去就は不明

温泉街を散策するとすぐに廃業した旅館が目に入ります。
ここは比較的規模の大きな温泉旅館です。
侵入者の形跡はなく、保存状態は良好でした。





建物のデザインに統一感がありません。
増築を繰り返した旅館建物の典型的な例です。

ここに新たな宿泊客の名前が記される日が来るのでしょうか?

「国際観光旅館」というステータスはこの後の廃業したホテルでも見かけます。
一流を謳ったホテルが栄華を保ち続けるとは限らないのです。

3.ホテル英○

去就は不明

今度は小規模な廃業ホテルです。喫茶店も営業していません。
こちらもほとんど荒らされていません。

部屋数も少なそうですね。
外から見る限りでは保存状態は良好のようです。

4.ホテル あ○や

去就は不明

ここは比較的大きな温泉旅館です。温泉街の中心にも近いです。
窓の障子が剥がれつつあります。
保存状態は良くても、人が使わないと建物は急速に劣化します。
現役時代には、ここから温泉が流れ出る演出があったと思われます。

窓から内部を撮影。まだまだ状態は良さそうです。
今のうちならば営業も再開できるでしょうが、現実は厳しいようです。

5.ホテル み○○や水光園

この土地、建物は加賀市土地開発公社が取得し、片山津温泉の総湯(公衆浴場)を建設する予定です。
ソース:2008年2月13日付、北国新聞
既存の建物を流用するかどうかは不明。おそらく取り壊されるでしょう。

今度は外見ではまだ営業していそうな温泉旅館です。

ツタに覆われた箇所もありますが、保存状態は良好。

玄関付近の屋号がある箇所。

全盛期には積極的にTVCMなども展開し、地元民の中では知名度の高い旅館です。
新聞で廃業のニュースを見た時はビックリしました。

この温泉旅館も大規模な施設を維持するだけの客が呼べなかったのでしょう。
侵入者の形跡はなく、簡単に営業を再開できそうですが、
復活の道は開けるでしょうか?

6.ホテル白○荘

去就は不明

ホテル白○荘は片山津温泉を代表する老舗旅館でした。
ところが、1969年(昭和44年)5月に火災で焼失。温泉街を巻き込む大火に。
ホテルは再建され、老舗旅館として復活を果たしましたが、2002年に廃業。

かつての老舗旅館としての貫禄は感じられません。
建物下の空間はどこからか水が流れ込み、水没していました。

7.○○観光ホテル

この土地、建物はすでに片山津温泉進出を果たしている大江戸温泉物語グループが取得しました。
この温泉グループは片山津温泉で最後に廃業した温泉旅館をいち早く買い取り、リーズナブルな価格を売りにした宿泊施設として再オープンさせています。建物の老朽化、損傷が激しいため、解体、更地にして跡地を温泉街広場、公園として整備する予定です。
ソース:2008年2月13日付、北国新聞

温泉街で一番不気味な雰囲気が漂う通りには、巨大な廃業したホテルが並びます。
その中の一つ、○○観光ホテルは、侵入者によって荒らされたため、
フェンスなどが設置されて警戒されています。

ホテルの看板。

こちらも巨大な施設です。維持するだけでも大変ですね。

侵入者に警告する看板が設置されています。

少しづつ荒廃が進んでいます。

当時は東京都の法律事務所が管理していたみたいです。
大江戸温泉に買い取られてからは整備が進むでしょう。

8.片山津ロ○○ルホテル

去就は不明

今回紹介する廃墟群の中で最大の規模を誇るホテル。
いくつかの廃墟サイトで潜入レポートが公開されています。

なんだかホテルニュージャパンを思い出させるような造り。
あまりの規模の大きさに圧倒されます。これが丸ごと廃墟…。

温泉リゾートを思わせるデザインではありません。無機質な外観。
収容人数第一で建設するとこんな感じになるのでしょうか。

マンションのような造りに萎えてしまう。
これから温泉を楽しむという期待をかなえてくれそうもない。



大江戸温泉が買い取った先のホテルと隣接しています。
ここもいずれは消え行く運命でしょう。

9.国際観光旅館 ○泉

去就は不明

先の大型ホテル廃墟に並ぶ最後の廃業物件。
左隣の「加賀プラザホテル」は未だ営業していました(現在は不明)。
この物件をはじめ、廃業物件に囲まれて営業している気の毒な例。

人気はありませんが、荒れた痕跡もありません。

作者:これだけの温泉旅館が廃業したなんて・・・どんな温泉地だ?ってか・・・はあ・・・。
助手:最近では大江戸温泉がここに進出して有名になりましたね。1泊2食付で1万円以下の料金はいいですね。
作者:そうそう。これだけの大型旅館が生き残るには、単価を下げてでも客を呼ばないと。1人客お断り、週末連休は数千円増し、ろくに世話をしない仲居さんに渡すチップの常態化、形式化した値段の高い食事などなど、こんな殿様商売が現代に通用するわけがないよ。
助手:手厳しいですねぇ。たしかに加賀温泉全般にいえる傾向ですね。
作者:全てが合理化した旅館にする必要はないよ。手厚いサービスや高級料理を期待する客にはそういった旅館があればいいし、要は訪れる観光客の様々なニーズに手広く応えることができる温泉街でないと今後の厳しいレジャー業界を生き残っていけないってことだ。
助手:僕も8千円前後の料金ならば行ってみようかなって気になりましたからね。予約状況を見ると、金曜、土曜、祝前日は3ヶ月先も満室って感じですね。なかなかの盛況ぶりですよ。
作者:あとはこれは個人的な希望だけど、城崎温泉みたいに外湯をたくさん造ってほしい。温泉をハシゴする楽しみは温泉地でしか体験できないからな。片山津温泉も総湯を建て替えるみたいだから、これにも期待できるな。

2008年、2009年に再訪した時のレポートはこちら→


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