廃屋探検のノウハウ 2
準備、装備を万全にして廃屋見物を楽しもう!

2.廃墟探索で準備したいもの(装備、持ち物)

 本格的な探索を予定しているなら事前にそれなりの準備をするのは当然です。意外と重宝するのは軍手。崖を下る、閉所を通り抜けるなど、足場が悪くて手を使って難所を突破しなければならない局面 がよくあります。そんな時、軍手があれば汚い地面や床、けばだった木材にも安心して手を置くことができます。

探検目的なら底の厚い運動靴などをはいて中に入ること。床にはガラスの破片や釘の出た木材などが散乱していることが多くてとても危険です。下駄やサンダル履きなどは論外!この 程度の認識で廃墟 探索を考えているのなら考えを改めてください。  探索時の服装について、僕などはいつもGパン履き、履き古したものがおすすめ。汚れますし、Gパンは丈夫です。夏季はTシャツ姿がほとんどですが、本格的な探索にはおすすめできません。上着は ジャージなど、体をきっちりと守るものの方が安心できます。いずれに しても廃墟は外的障害物が多いです。柱か ら飛び出た釘、木材の切り口、窓枠に嵌ったままの割れた窓ガラスなど ・・・そうしたも ので着衣を傷めます。廃墟探索の旅行でファッション性を求めるなど、 所詮は無理な相談なのです。

 身を守るような装備がほしい場合、護身用という名目でサバイバルナイフ、スタンガン、警棒などを持参する人 がいるようですが、殺傷能力のある道具は凶器と見なされ、万一警察の取調べを受けた場合非常に不利な状況になります。どうしても護身グッズを持っていきたい場合は、人体に無害な成分を使った催涙スプレーなどが販売されているようですから、それを試してみるのがいいかと思います。 怪力の凶悪犯でもあまりの苦しさにしゃがみこんで涙と咳が止まらなく なるそうです。

 おすすめはしませんが、夜間の探索を計画しているなら懐中電灯は必須。昼間の探索でも廃鉱や地下施設など、 暗所が多い探索なら必要です。作者は単独で探索の場合は暗所へ入るのを自粛していたので必要なかったのですが、合同探索を始めてあわてて準備しました(苦笑)。最近はLEDランプの小型で強力なものがかなり安価で売られているのでぜひ一本持ちましょう。電池の残り具合に注意!懐中電灯に限らず電源を必要とする道具は替えの電池を必ず準備しましょう。

 外部の連絡をとる手段として携帯電話はもはや常識となってきました 。電波の受信具合を最優先するなら、自分の使っているキャリアが廃墟のある地域で使えるかどうかを事前に確認しておきましょう。NTT Docomoは、当初第3世代の携帯電話であるFOMAのサービスエリアが狭いと酷評されていましたが、今ではどのキャリアにも負けないくらいのエリアをカバーするようになりました。携帯電話も電池の残り容量には気を配りましょう。

 カメラは個人的には必須と言うべきアイテム。逆にカメラを持っていない場合は廃墟を発見しても所在を記録するだけで探索はしません(笑)。僕は記録を残す手段としてカメラは欠 かさないもので す。メモをとったりするくらいなら何でも見たものをパチパチカメラに収めます。

3.廃墟探索の危機管理(外的要因)

 廃屋ですから当然建物のメンテナンスはなし、長い間放置されていて老朽化が進んだものがほとんどです。倒壊の危険も十分ありますし倒壊まではいかなくても壁や天井が崩れて落下 したり、床が腐っていたり、窓ガラスの破片が突然落ちてきたりと、危険がいっぱいです 。もちろん事故が発生しても誰も補償してくれません。廃屋探検は自分の責任で実行するのは当然のことです。

危険回避には、老朽化の激しい建物には(たとえ魅力的でも)近づかない、壊れた壁や天井、割れた窓ガラスの 傍には近づかない、大きな家具は倒れてくる場合があるので注意する、 足場にも気をつけること。廃屋の奥深くまで潜入する場合、空気の状態もチェックしてく ださい。カビ臭い雰囲気中で長くいられ か、酸素の量は十分か、シンナーや塩素、一酸化炭素や硫化水素など、 有毒ガスの心配がないか、など。怪我をして助けを求めることができても、有毒ガスで侵され意識を失うと、助けを呼ぶこともできません。少しでも気分が悪くなったら直ちに探索を中止してください。

さて、装備が完全でも外的障害が多い廃屋内、その中でも最たる危険 は「高所の探索」です。平地の探索では気にならなかった足場が重要になってきます。足もとは十分な強度があり ますか?先を早く見たい気持ちはわかりますが、はやる気持ちを抑えて足元を良く見てく ださい。床板が腐っていませんか?鉄板が 錆びていませんか?階段を昇降する場合、まずはゆっくりと片足を前に出して少しづつ体重を掛けてみてください。これで様子がおかしいなら絶対そこから先には進まないように!絨毯敷きの床面では、 床板が損傷していても外見では見分けがつかない場合があります。怪しいと思ったら進むのを控えましょう。畳敷きの場合は床板や床梁が腐っていても畳の強度だけで体重を支えてしまう場合もあります 。歩いてブカブカと弾力のある感触の場合はその危険が高いです。今は支えていても畳自体の支えが無くなれば畳ごと落下することになるので注意しましょう。

今度は通路などで、足場の悪い場所を通行中、無意識に手すりや壁に手をかけてしまいますね。しかしちょっと待 ってください。手すりの強度は充分でしょうか?頼りにした手すりが崩落した場合、不意打ちを食らってまず体制を立て直すことはできません。そこがもし高所だったら・・・自分が体重を掛ける箇所には細心の注意を 払ってください。作者自身、錆びた階段を見て断念した、崩壊寸前の手すりを見て近づくのをやめたことがあります。触らぬ神に祟りなしです。

廃墟に存在する設備、物品には、正体不明なものが多く、それらの取り扱いによっては身の危険を生じたりするかもしれません。  配管から漏れ出ている気体、液体が可燃性の物質であったら、ちょっとした火気が元で引火、爆発の危険があり ます。床や壁を濡らしている液体も同様です。 床や壁を濡らしている液体は、可燃性でなくとも人体に有害な薬品の可能性もあります。手に触れただけで生命に関わるような猛毒物質かもしれません。薬品でなくても、雑菌に侵された注射針、医療器械などから漏洩する放射性物質などは目に見えなくとも非常に危険!特に病院や学校の薬品が保管されていた部屋には充分注意しましょう。よくシンナーや違法な薬物を盗み出す目的で廃病院に忍び込み、薬品が入った瓶を片っ端から開けて匂いを嗅いだり中をのぞいたり手にとって見たりする輩がいますが、非常に危険です。やめましょう。

最近なぜか注目されるようなったアスベスト、いわゆる石綿の有害性 は、廃墟探索で大いに関係してきます。知 らない間に石綿の粉塵を吸い込み、長い年月を経て肺ガンなどの健康被害をもたらすこと があります。

内容物が無害な物質でも、それが爆発的に噴き出したら…。底が錆び て腐食した消火器、スプレー缶など。廃墟内での悪ふざけで代表的な「消火器撒き散らし」は、廃墟を汚損するだ けでなく、それを 使った人にも危害が及ぶこともあるのです。消火器くらいの大きさの圧縮容器が爆発したら、死に至ることもあるでしょう。配管設備で、コンプレッサーが生きていた場合、圧縮空気の噴き出しも非常に 危険です。水圧、油圧ポンプも同様です。

目に見えない外的要因、それでもどの要素よりも恐ろしいのは「電気 」。一般的な電柱に張り巡らされた電線に かかる電圧は6000V。建物内に入れば100または200Vです。100V程度の電気なら、致命的とは限りませんが、危険なレベルであることには変わりありません。古い民家では、手の届きそうな天井付近にむきだしの電線があったりします。壊れた壁から飛び出た電線も触れると危険です。むやみに 配電盤の中のスイッチを触るのはもってのほかです!ちょっとした規模の建物なら、電気室が設けられ、そこに建物中の電源が集結しています。大規模なホテルや工場では屋外に変電設備を持つところも あります。そういった場所では電圧のみならず非常に大きな電流が流れているため、エネルギーも膨大なものとな り、危険度が高まります。坑道などでは、鉱物搬出などの目的で軌道、 貨車が設けられ、 電気機関車で牽引するところがあります。天井の低いトンネル内に架線が敷設されているので、手が届きます。架線なので触れたら即あぼ〜んです。電気設備には近寄らない!これが原則です。

廃墟とは直接関係ありませんが、外的要因には有害な動植物も関係してきます。現役時代には無かった動植物の繁殖は人体に深刻な危害をもたらすことがあります。動物ではスズメバチなどの昆虫類、 毒ヘビなどの小動物は毒による危険があります。野生化し凶暴になった野良犬、山間部の廃墟では野生の猪や熊、猿に 襲われることもあるでしょう。植物では棘のある草木で怪我をする外傷的なもの、表面にもつ毒により皮膚や呼吸器が冒されるものがあります。また直接危害に及ぶことはなくても、突然出現した動物などに驚き、バランスを崩して転倒、転落するという間接的な危険も考えられます。

4.廃墟探索の危機管理(人的要因)

ある意味、外的要因の危険よりも対処に困るのがこの人的要因による 危険です。廃墟とは文字通り廃な場所。そういった場所に群がるのは廃墟趣味の人も含めて(?)まともな人間のわけがありません。

★ドキュンとの遭遇
 まずは「ドキュン」について…年齢は中学生くらいから最近では40代以降の大人まで、不良行為ばかり繰り返す人のこと。暴走、暴力を中心に、考え付く悪事なら何でも手を出す「珍走団(旧名称:暴走族)」、その他には俗にヤンキー、チーマー(死語?)、チンピラと 呼ばれている輩を総称してこう呼びます。 以降これらの人種を総称して「ドキュン」と呼びます。某巨大掲示板で 多用されており、 「ドキュソ」「DQN」も同じ意味です。 単独で活動することは少なく、集団でたむろしています。廃墟で集まる時は昼間だと目立つため、夜間になると 遭遇する確率が高くなります。腕力に自信がないのか、金属バットやバ タフライナイフなど、凶器を携帯するのが大好きなようです。精神的にも肉体的にも「ガキ」であるため、損得勘定が苦手で後先を考えず、血の気が多くかなり獰猛です。もし不幸にも出会ってしまった場合、非常に厄介です。逃げるしかないのですが、多勢に無勢なこともあります。いくら危険を感じたからといって相手に危害を加えることは避けたいものです。やはりドキュンがいない時間帯を選ぶなど、自己防衛しかなさそうです。

★ヤ○ザ、ウ○クとの遭遇
ヤ○ザはご存知、暴○団関係者のこと。よく言われているのは、廃墟を管理している団体に暴○団が多いということ。これの真偽は別として、廃墟を訪れる人たちを狙った強盗、恐喝、 暴行事件がしばしば発生しており、犯人が暴○団関係者だったり背後に暴○団がいたりすることがあります。作者の唯一の体験は、 とある温泉地で廃墟らしい建物の外観を物色していた時、突然背後から 声をかけられまし た。振り向くと見るからに「その筋の関係者」とわかるシャツからはみ出たタトゥーが素敵な男性がじっとこちら を見ていました…。運動会でも発揮できなかった猛スピードで撤収!もう思い出したくも ありません…。彼らは損得勘定のもと、隙のない手段で攻めてきます。かなうわけがありませんので、遭遇してしまった場合は逃げるしかありません。
 ウ○クというのは、あくまで一例ですが、特定の政治結社や団体がこ れにあたります。ウ○クの他には、かつての過激派のようなサ○ク、オ○ムなどのカルト宗教団体なども含まれると思います(しかしながら後者の2つは表立った活動を嫌う場合が多いのであまり考えなくてもいいでしょう)。ウ○クの思想、活動内容そのものは廃墟探索とは何ら関係ないのですが、ヤ○ザの場合と 同じく、彼らによって管理されている物件にうっかり近づいた場合、何らかの報復を受けることは間違いなく、それはヤ○ザよりも過激だと言われています。作者はまだ経験がないですが、廃墟っぽい物件に迷彩色の街宣車というコンボは即ブラックリストに入れ、探索はもちろん、近づくこともしません…。

★先住民との遭遇
廃墟といっても寂れ具合はいろいろあり、保存状態の良い廃墟などは 、自分の部屋よりもキレイで片付いている ということも珍しくありません(苦笑)。そんな物件に目をつけるのは 、浮浪者、ホームレスと呼ばれる住所を持たない人たちです。彼らは今の棲家を守るため 、時には非常に攻撃的な行動を起こすこと があります。自己防衛のための行動は、親熊が子熊を守るために人を襲うように執拗かつ残酷になることがあります。そっとしておきたいものですが不幸にも遭遇した場合は、できるだけ穏便に撤収しましょう。作者はまだ遭遇した経験はありませんが、某有名廃墟を含めた さまざまな廃墟 で、明らかに誰かが不法に住み着いている、という痕跡を発見していま す。次に探索したときには今度こそ遭遇するのでは、と正直心配しています。

★管理人、警備員との遭遇
廃墟の所有者、管理人に遭遇する可能性は非常に低いですが、管理人によっては自ら廃墟内を定期的に点検、監視している場合があります。警備員のとの遭遇も同様ですが、廃墟の所有者が警備会社 (いわゆるセ○ムとか)と保守警備の契約を結んでいて、あなたが潜入 のためにドアや窓を開けた時にセンサーが 感知し警報装置が作動して警備員が駆けつけるといったパターンもあります。いずれの場合も言い訳や居直ったりせずに正直に潜入に至った 理由をはっきり告げましょう。「内部の写 真が撮りたかった」「人のいない建物の雰囲気が好きでつい入ってしまった」などなど。 その結果どんな措置をとられるかは管理人や警備員によって違いますが 、正直に謝罪し、穏便に対処してくれるように「お願い」するしかありません。
キレイ事と言われるかもしれませんが、事前に廃墟の所有者や管理人 とコンタクトできるならば、可能な限り探索や撮影の許可がもらえるよう交渉してみてください。実際問題マスコ ミ関係者でもない 一般人に入場許可を与えて、万一中で事故や事件を起こされたら、困るのは所有者や管理人ですから、すんなり許可をもらうことは困難でしょう。恥ずかしながら作者の廃墟探索はぶっ つけ本番か現地に 一直線で、許可をもらうようなプロセスはありません…。それに引き換え、助手のHAKUTAKA君は、車両基地などに 入る時にはあらかじめ担当者にアポを取って現地でその担当者と面会し て挨拶し、正式な許可をもらって(ヘルメットを渡されるらしい)写真撮影に臨むそうで す。旅先で出会った管理敷地内の物件を撮 りたくなった時はできる限りそこの管理事務所などに赴いて撮影許可を もらうそうです。 やはりどれだけお願いしても断られることもあるそうですが…。 HAKUTAKA君と一緒に撮影した「ラーメン電車」に ついてもそこの家主さんに挨拶していました。さすがですね。

★警察官との遭遇
 さまざまなリスクを背負って廃墟探索を決行、細心の注意を払っていたのに目撃者からの通報で警察官が来て捕まった、巡回中の警察官に見つかったなどで、職務質問を受けた場合は 、素直に応じま しょう。身分を証明できるものを持っている場合は、進んで提示しまし ょう。身元を偽ったり、うその供述をして はいけません。それからの措置は、警察官の裁量によります。あなたの 取り調べ時の態度 で扱いが変わってくるかもしれません。逮捕に至りそうな場合は以下を 続けて読んでください。
廃墟の所有者や付近住民から、被害報告として通報された場合、警察官はあなたを「現行犯逮捕」するかもしれ ません。その場合は逮捕に至る罪名を聞き、冷静に対処しましょう。逃げる素振りを見せ たらいけません。先述したように身分証明書などを警察官に見せ、自分の名前、住所を相手に伝えましょう。あなたが犯した犯罪にもよりますが、以下の法律を盾に逮捕を回避できるかもしれません。
【刑事訴訟法第217条[軽微事件と現行犯逮捕]】
三十万円(刑法、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備 に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪の現行犯については、犯人の住居 若しくは氏名が明らかでない場合又は犯人が逃亡するおそれがある場合に限り、第二百十三条から前条までの規定を適用する。(要は軽微な犯罪に限り、身元を明らかにしている人間は現行犯逮捕できないということ) これはもともと痴漢冤罪を回避するために主張できる法律で、必ずしも適用できるかどうかは作者は勉強不足 のためわかりません。いずれにしても通報されたのは運が悪かったから 、と考えずに当然 の報いと捉えて反省しましょう。

★廃墟内でトラブルに巻き込まれたら
外的、あるいは人的な要因でトラブルが発生してその場で解決できなくなった場合は、まず警察へ連絡してください。怪我を負ってしまった場合も救急と同時に警察にも連絡しましょう。そして「警察官に遭遇したら…」の項と同じく潜入に至った理由、トラブルまでの経緯を正直に告げましょう。自分は巻き込まれていなくても、中で犯罪行為を目撃した場合もためらわずに警察に通報してください。 事件の痕跡(事故者、自殺者、犯罪行為)を発見した場合は絶対に手を加えずにすぐに警察を呼ぶこと!
携帯電話を持っていないなどの理由ですぐに通報できない場合は近くの公衆電話を探してください。何らかの理由で身動きができない場合はそのまま救助を待つしかありません。懐中電灯があるなら窓に向けて照射し、揺らしたり点滅させたりして外部の人間に知らせましょう。大きな音を立てても大丈夫なら大声で助けを呼ぶ、金属製のものを打ち鳴らして音を出し、外に知らせてもいいでしょう。

次は、カメラ、写真について解説します。→