廃屋コラム


廃屋、廃墟について、作者が思うところをいろいろ書いていこうと思います。

第1回 廃墟のジャンル分け         作者が廃墟を勝手にジャンル分けして解説しています。
第2回 廃墟を構成するもの(外観編)   廃墟の定義づけを作者が勝手に決めてみました。

第3回 作者ぶれいく58とジンクス     自己紹介の延長線ですが・・・
第4回 廃墟を構成するもの(内部編)   廃墟に潜入してはじめてわかる違いとは?



第一回 廃墟のジャンル分け

廃墟と一言で表現してもその世界は広い。建物だけじゃなく廃車、廃線、廃鉱なども含めると多岐にわたります。
廃墟趣味にハマったビギナーはむしろ廃墟のジャンルが豊富すぎて選択に迷うほどじゃないでしょうか。
長く廃墟趣味を続けている人はどんなジャンルの廃墟に魅力を感じるか、あるいは興醒めするか、そんなことを管理人ぶれいく58があくまで自身の主観で紹介してゆこうと思います。

1.民家
当サイトが「廃屋」と銘打ってるとおり、廃墟というより廃屋と呼ばれることが多いのがこの民家というジャンルです。
おそらく日本で一番数が多く、誕生したり消滅したりする数も膨大なものと思われます。
とはいえ、前の住人が引越しして無人となった家が即「廃屋」というわけではありません。単なる「空家」という位置付けだけで、中古住宅として売りに出されることがほとんどだからです。
何らかの理由でこれまで居た住人が家を捨てて姿を消し、無人となった家がそのまま放置されて「廃屋」となる経緯がほとんどです。借家として使われていた建物でこれまで居た住人が引越し、次の住人が決まらないまま持ち主も管理を放棄して廃屋と化するパターンもあるようです。住んでいるわけでもない家を管理するのは大変ですから…。
こうした「廃屋」が日本中に多数存在するにもかかわらず、廃墟サイトであまり話題にならないのはいくつかの理由があるみたいです。
@元々が民家だから、住宅地に在ることがほとんどで周囲の影響を考えると探索しづらい。
@規模が小さくて物足りない。
@個人の所有物で生活臭があると、他人のプライバシーに踏み込んでいるような感覚があり敬遠する。
廃屋にっぽん周遊ではそのサイト名のとおり、民家の廃屋でも分け隔てなく紹介してゆこうと思います。
2.アパート、マンションなど集合住宅
大きく分けて二つのタイプがあります。
一つは老朽化して住人が居なくなったアパートが放置され廃墟化したもの。既存の住人が転居して、代わりに入居する人も老朽化したアパートを敬遠するために来ない、という流れでしょうか。
もう一つは建設途中に資金が尽きて完成を断念した中途の建物。バブル期の末期に建設が予定されたものの、バブルがはじけたために建設が続けられなくなって放置されたマンションなどです。
どちらにしても、集合住宅なので間取りに変化がなく、内部は単調であまり見どころはありません。住人の残していったわずかな調度品や内装品で当時の面影を想像する程度です。
3.旅館(日本式)
廃墟サイトで一大ジャンルを築いているのが、この旅館廃墟です。「ホテル」と銘打っていてももともとのシステムが日本の旅館形式だったところはこのジャンルに含まれます。多くの場合は温泉地に存在する傾向が強く、廃墟となった原因としては庶民のレジャーの多様化でしょう。大勢の団体が温泉地に押し寄せて宴会とかいうスタイルは、忘新年会ならともかくとして今は流行りません。施設が肥大化すると、従業員も増やさなければならず、設備の維持費も比例して大きくなります。こんな状態で利用客が減ってしまうと、従業員も持て余し、空き部屋の管理も無駄な出費となり、よほどの企業努力をしない限り営業が難しくなります。こうして過去のレジャー感覚に頼っていた巨大旅館が、次々と廃業に追い込まれました。また、高度成長期の真っ只中では、集客第一で防災、安全を疎かにして、大規模な火災を起こした巨大旅館が続出しました。

1968年 池坊満月城火災(地下ボイラー室から出火、30人死亡)←この旅館は再建されて営業中?
1969年 磐光ホテル火災(宴会場でショーの最中に火災発生、31人死亡)
1980年 川治プリンスホテル火災(配管工事中に建物に引火、45人死亡)
1983年 蔵王温泉観光ホテル火災(コンセントの過熱で出火、11人死亡)

これらの温泉旅館で共通しているのは、豪華設備を謳っていても、それは見た目だけで中身は劣悪、さらに度重なる増築で館内が迷路のようになっていた点です。これが原因で避難が出来ずに逃げ遅れた泊り客が多数出たそうです。
現在廃墟となって存在する大型旅館では、この傾向が良く見られます。豪華設備が自慢だったはずの館内も、長く放置され朽ちてゆくと、実は安普請、手抜き工事の跡が見つかることもあり、廃墟マニアを震撼させます。
客室は単調で、あまり面白味がありませんが、特別室や和室洋室とある程度のバリエーションがあれば、その違いを見て味わうことも出来ます。
宴会場はその旅館の実力を誇示できる場所のようで、その広さや内装は旅館によりかなり差があります。
温泉旅館の廃墟ならば、最大の醍醐味は、やはり大浴場でしょう。小曲園の宝石風呂、北村荘グランドホテルに至っては、通称が「宇宙回転温泉」と呼ばれ、こちらの呼び名のほうが圧倒的に知名度が高いのも、浴槽が回転する奇異な仕掛けが廃墟マニアにうけた為でしょう。


4.ホテル(西洋式)
一般的にシティーホテル、ビジネスホテルと呼ばれているところで、西洋式のシステムで客室も一人部屋や二人部屋がほとんどの宿泊施設です。都市部に多く見られます。
そんな性格からか、廃業するとすぐに取り壊されたり、別の用途に転用されたりして廃墟として在り続けている物件はあまりありません。一部探索が成功した福知山ロ○ヤルホテルについても、長く放置され荒れ果てていましたが、近年改装されリニューアルオープンしたようです。もともと経営破綻したホテルチェーンと直系の祖にあたる阪急系が経営を引き継いだみたいです。→【参照】ホテルロイヤルヒル福知山
福知山ロ○ヤルホテルを例にとれば、郊外に位置し、結婚式場も備えた西洋式ホテルでしたが、結婚式の多様化が進んで利用者が減少し、それらの設備を持て余して廃業に追い込まれ、廃墟化してしまう傾向があるみたいです。もっとも福知山ロ○ヤルホテルはそのチェーンホテルが倒産したために廃業になった(倒産前に合理化で自主廃業?)というのが真相のようです。その後復活したホテルにも結婚式場を備えており、経営努力で集客に成功したのでしょう。
廃墟化したホテルの内部はそのほとんどが客室で占めるため、客室が単調であればあまり見どころはありません。先述した結婚式場とか付帯設備が多く残っているならばその様子を見て味わえるでしょう。
5.ラブホテル
廃墟といえばこれ。廃墟となる建物の代名詞ではないでしょうか。実に全国のラブホテルとして建てられた建物の中で、半分くらいが営業してなくて廃墟と化している、といっても過言ではないくらい、廃墟率の高いジャンルといえます。
まさに廃墟界の王道といえるジャンルですが、ファンの間ではもはや食傷気味で、発見率は高いものの、あまり人気のあるジャンルではないようです。しかしながら、こんな廃墟本が出版されるくらいですから、固定ファンもいるのでしょう。
旅館やシティーホテルとは違って客室に変化を持たせたところが多く、それらを見て回るだけで楽しめるでしょう。客室内はネタの宝庫です。ラブホテルならではのエログッズやエロを意識した浴室、伝説の回転ベッドも目撃できるかもしれません。逆に言えば、それ以外に見どころはありません。秘匿性の高いシステムのため、共有する施設が皆無なためですね。それでも大規模なラブホテルともなると、客室数が20程度の規模があり、全て探索すれば数時間を要する場合もあります。
数年前に発見された石川県の「モテル北陸」は、日本最古のモーテルということが判明し、当サイト他の廃墟サイトを賑わせました。
6.民宿、ペンションなど
小規模宿泊施設。民家の廃屋と似たテイストを持っていますが、その性格から所在地は限定されてきます。民宿は釣り客の多い港町や海水浴場など、ペンションは若者向けの海山問わず観光地。ペンションやプチホテルは初めから営利目的で建てた建物がほとんどなので、独特のテイストを持っていることがあって面白いジャンルかもしれませんが、作者は1件だけしっかり施錠された廃業ペンションを見ただけで他は発見例がありません。他の廃墟サイトでもあまり人気のあるジャンルではないようです。
内容は作者自身潜入経験がないことと、他サイトでもあまり扱っていないこともあって、想像するしかないですが、民宿であれば、客室部分は日本式旅館を意識した造りになっている以外は民家の構造とほとんど変わりが無いでしょう。ペンションは、内装や調度品に個性を持たせている場合が多いので、そういったものが無事に残っていればその変化を堪能できそうです。客室も構造は同じでも、壁紙やカーテンなどの色柄に変化を持たせてあることもあり、そういった部屋が朽ちてゆけば、他では見られない味わいがあるでしょう。
7.病院
日本式旅館、ホテルに次ぐ廃墟界の王道でしょう。絶対数は少ないものの、発見されれば一気に有名化するジャンルがこの病院廃墟です。
その理由は明白、廃墟ファンのみならず、心霊ファンが黙っていないからです。廃業した理由はいろいろあれど、必ずといっていいほど心霊にまつわる噂が一人歩きし、それが肝試しの刺激剤として作用してしまうようです。
多くの建物が鉄筋コンクリート建てで地味なデザインなので、外観のインパクトは強くありません。内部も単調な病室の連続なので、廃墟ファンとしては物足りないところもありますが、やっぱり心霊ファンでなくともその重苦しい雰囲気は病院廃墟でないと味わえないということもあり、一度は憧れるジャンルでしょう。作者も数は少ないものの、探索した物件はいずれも高く評価できます。
8.学校
廃墟界の正統派ともいうべきジャンル。インターネットが大衆化する前から老舗廃墟サイトで多数紹介され、木造建築などはその美術的価値から写真集も出版され、古き良き時代を偲べる貴重な遺構です。現在では絶対数が非常に少なくなり、発見率は低いです。学校は創立、廃校が実施される前から広く認知されるので、建物の運用が比較的しっかり行われ、廃校後も管理が行き届いている物件が多く、転用先が決まる例も多いです。
こんな理由から、一部のファンが期待する物々しい状態に朽ち果てるような最期もあまり期待できないので、荒らされることも少ないジャンルといえます。廃墟ファンとしては、内部まで見れる学校が少ないので、外観だけを楽しむ例が多いようです。
内容は教室、特別教室、体育館などがありますが、教室は基本的に同じ構造の部屋の連続なので変化はありません。残存物なども無い場合が多いので、建築物そのものを味わうといった感じですね。中には廃校になった当時の在校生が黒板などに残した落書きなども学校廃墟にしかないもので味わいがあります。

未探索

9.保育所、幼稚園
学校よりさらに絶対数が少なく、発見は非常に困難です。もし廃墟として残っているとすれば、非常に稀な例といえるでしょう。幼少の頃を過ごした空間が廃墟と化する現実を目の当たりにすると、とても感慨深いでしょう。作者の好きなジャンルがこの学校、幼稚園なのですが、未だ発見できずにいます。他の廃墟サイトを探すと幾つか見つかるのですが、立地的に難しい理由もあり、未だ探索までに至っていません。(作者注:2008年春に探索が実現しました)
内容は学校と似ていますが、乳幼児向けの施設ということで、設備が子供向けに小さい、あるいは高さが低いといった特徴があって面白いです。外観、内装は子供向けで明るいものが多く、その明るくて可愛い内装と廃墟になってからの朽ちて暗いイメージとのギャップが他の廃墟には無い雰囲気を醸し出しています。
10.テーマパーク(遊園地、動物園など)
かつては各県に1箇所以上遊園地があって、週末には地元の観光客で賑わっていました。規模は小さいものの、最低限の遊具や施設が整っており、地元庶民にとって唯一のレジャー施設でした。やがてバブル期が訪れるとそうした観光客目当てにテーマパークが乱立しました。施設の陳腐化が進んで目新しさの無いかつての歴史あるテーマパークは次々と廃業に追い込まれ、利用客は新興テーマパークに流れてゆきました。ところがバブルが崩壊すると、今度は巨大な設備を維持できなくなり、さらにレジャーの多様化が進んで、今度はバブル期に建てられたテーマパークが次々と潰れてゆきました。結局大型テーマパークで生き残ったのは大都市周辺に建つ巨大映画会社などがバックにあるテーマパークだけとなり、地方の中小テーマパークは一部を除きほぼ淘汰されました。このジャンルは大きく分けて、

@比較的歴史のあるオーソドックスな遊園地
@バブル期に建てられたネタ要素が濃い遊園地

作者はいくつかのテーマパークを探索しており、いずれも満足できる内容でした。
11.工場
とにかく規模が大きい。内部も以前稼動していた内容によりさまざまなので、けっこう変化もあります。ファンの間ではハズレがないこともあってか、けっこう人気のあるジャンルのようです。絶対数は少ないですが、それでも全国的に知られた工場廃墟がいくつかあり、廃墟マニアの憧れの場所でしょう。
残存物は工場によって様々ですが、扱っていたものによっては非常に危険な場合もありますので、うっかり手を出さないよう注意する必要があります。その危険があるせいか、工場自体は稼動を止めていても、セキュリティシステムは常時作動していて管理人が常駐する廃工場もあるようです。
作者としては、それほど好きなジャンルではないのですが、石川県内でも何箇所か発見し、探索に成功しています。
12.廃鉱
日本はかつて、資源の量こそ少ないものの、種類は豊富にある国、と言われてきました。日本のことが「黄金の国ジパング」と呼ばれたのも、量が少ないながら金が掘られていたからとも言われています。現在はその種類さえ誇れないほど資源が枯渇したようです。日本の金山、銀山はほとんど稼動していません。かつて稼動していた鉱山は次々と閉鎖され、一部は廃墟化しています。
このジャンルは、鉱山の坑道そのものを探索するというよりも、鉱山のために併設された工場、事務棟、住宅などの付帯設備を見ることにあります。廃墟の聖地、軍艦島や神岡鉱山、松尾鉱山などの大規模炭鉱、鉱山では、それに付随する施設も巨大なものになります。探索には最低半日、完全制覇を目指すならば数日を要します。
この大規模なスケールに加えて閉山してから長い年月が経過した廃鉱では当時の残存物を見て歩くだけでも数十年前にタイムスリップした感覚を味わうことができ、廃墟マニアに絶大な支持を得ています。
13.廃車(自動車)
廃墟ではありませんが、近年「北陸廃物紀行」のダイゾウさんがこのジャンルを確立して、自動車マニアを巻き込んでの人気ぶりを獲得したジャンルです。有名廃墟サイト「廃墟Explorer」でも「廃車Explorer」というコーナーを新設するくらいの一大ジャンルに成長しました。
このジャンルは大きく分けて二つあります。自動車車両と鉄道車両です。先述したサイトでは前者を扱っています。
乗用車が持ち主の元を離れて廃車化することはちょっと考えられないのですが、空き地や田畑の片隅に乗用車の廃車体をよく見かけます。年代によっては非常に貴重な車であることもあり、車マニアにはたまらなく魅力的でしょう。作者はオート3輪が大好きで、旅先で探すのですが見つかりません。こうした古い年代の廃車を探す場合は時間が経てば経つほど発見には不利となるので、まさに運次第です。
通常は外観の撮影で満足できる場合が多く、その敷地内(私有地)に立ち入らずに撮影できるならば、他の廃墟探索とは違って完全に合法である場合がほとんどなので、廃墟ファンのビギナーにもおすすめできるジャンルです。
14.廃車(鉄道)
このジャンルは自動車車両と鉄道車両の二種類があるということは先述したとおりですが、当サイトでは鉄道マニアの助手の影響もあって後者も扱っています。鉄道マニアとは無縁でも、放置された鉄道車両にカメラを向ける廃墟ファンも少なくありません。
鉄道車両が廃車両として放置されることは通常ではありえません。鉄道会社の車両基地、専属の工場で解体処分されるからです。解体処分されるまで車両基地内で放置プレイされる例がありますが、これの写真を撮るために基地に侵入することは例え外観だけでも犯罪ですので実行してはいけません。
当サイトで紹介している物件(予告含む)は、
@駅や車両基地で放置されている廃車両を許可を得て敷地に入って撮影したもの(中には自由に撮影を許可されているところもあります)
@廃車となった車両を貰い受けた次のオーナーが何らかの理由で管理を放棄して放置されたもの、あるいは車両を使用した施設が廃業となったもののいずれかとなります。