廃屋コラム


廃屋、廃墟について、作者が思うところをいろいろ書いていこうと思います。

第1回 廃墟のジャンル分け         作者が廃墟を勝手にジャンル分けして解説しています。
第2回 廃墟を構成するもの(外観編)   廃墟の定義づけを作者が勝手に決めてみました。
第3回 作者ぶれいく58とジンクス     自己紹介の延長線ですが・・・
第4回 廃墟を構成するもの(内部編)   廃墟に潜入してはじめてわかる違いとは?


第2回 廃墟を構成するもの(外観編)

廃墟ファンは、どんな建物に魅せられるのだろうか?現役の建物と比べて廃墟は何が違うのか?
それは当然見た目ですね。それではどんな建物を廃墟と呼ぶのでしょうか?
あなたは廃墟を探す時、どんな「見た目」を決め手にしますか?
「管理されているから廃墟ではない」などといった複雑な事情は今回は無視して、あくまでも「見た目」だけで、廃墟の定義づけを考えてみました。

1.建物や敷地の雑草

廃墟というとどうしても建物を注目してしまいますが、僕は建物がある敷地全体をまず見渡します。雑草が生い茂っていて除草が全くされていない土地にある建物は廃墟の可能性が高いです。
また、建物本体が植物に覆われていることもあります。蔦系の植物が廃墟化した建物を覆いつくすことがあり、これが廃墟の決め手となることがあります。

現役の建物ならば、周辺の庭や駐車場が草に埋もれている、ということはまずありません。ちょっと除草をサボった場合、雑草が伸びてしまうことはありますが、それでも車が駐車できないくらい草が伸びてしまうと困ります。
建物が廃墟化して数ヶ月も経つと、イイ感じに雑草が茂ってきます。下手をすると建物が草木に埋もれて見えなくなることもあるくらいです。無秩序に生い茂った雑草に囲まれた廃墟は退廃的なイメージを増幅させます。
また、建物本体が植物に覆われている場合、廃墟だと認識する場合が多いですが、一軒家の場合、意図的に蔦を建物に這わせていることがあるので注意が必要です。とはいえ、デザインの一環として建物に植物を絡ませている時はしっかりと手入れがされている場合が多いので、よく見れば判別できると思います。

2.窓ガラス、ガラス戸の破壊

おそらくこれを指標に使っている人が多いのではないでしょうか?
窓ガラスが割れているのに放置されている建物は、廃墟である可能性が高いといえます。

住んでいる(使っている)建物で、窓ガラスが割れてしまうと、少なくとも防犯上問題があるので、直ちに修復します。ですから、割れた窓ガラスを放置している建物は、廃墟である可能性が高くなります。1枚だけじゃなく、何枚ものガラスが割れてしまうと、住居として用を成さなくなりますから、ほぼ間違いなく廃墟だ、と断定できます。
ただし、作者の経験上、一例だけ例外がありました。線路沿いに建つ民家で、電車の車窓から良く見えたのですが、2階の角部屋の窓ガラスが全部派手に割れているのが見えます。長らくそのままになっていたので、多分廃屋だから、もし付近を歩く機会があったら、写真を撮っておこうと思っていました。ところが数年後、やはり車窓から例の家を見ると、なんとキレイに板で塞がれていました。1階にはその家の住民と思われる人が出入りしていました・・・。
ガラスが割れた経緯まで調査しようと思うと、なかなか難しいところがあります。おそらく半数以上は人為的に割られたものです。投石によるものだったら屋内に石ころなどが必ずあります。屋内に侵入して中から鈍器を使って叩き割ったのであれば、建物周辺にガラスの破片が散乱しています。数は少ないですが、人があまり近寄らない廃墟であれば、自然に割れた可能性があります。それは風によるもの、降雪によるものなどありますが、こうした自然崩壊の場合は窓ガラスの他にも壊れた箇所が見つかる場合が多いです。建物は未だ新しいのに窓ガラスだけが割れているというのは、ほぼ間違いなく人為的なものです。
建物の窓ガラスが割れていると、それだけで(見た目の)マイナスイメージが大きくなります。それでも自然に割れた窓ガラスには懐古的、退廃的なイメージがあって独特の魅力がありますが、人為的に割られた窓ガラスは、暴力による破壊のイメージが強いので、道徳的観点から嫌な感情を持つだけのことが多いです。
3.壁の損傷(汚れやひび割れ、崩落)

建物が廃墟化して年月が経つと、外壁が劣化してひび割れ、ひどい場合は崩落してしまうことがあります。これを放置してある建物は、廃墟である可能性があります。

しかしながら、壁のひび割れ程度では、住むことになんら支障が無い場合が多いので、一般の民家でも壁のひび割れ程度ならば放置してある場合がありますので即決は危険です。
ひび割れが進行して、壁が崩落してしまった場合、屋内が露出するほどの深刻な損傷であれば、直ちに修復しないと窓ガラス同様に防犯上などいろいろと支障があるでしょう。これほどの致命的な損傷であるにもかかわらず、修復されずに放置されているならばさすがに廃墟である可能性が高まります。こうした建物は住むには適さないので仮に現役であっても周囲の人々には廃屋だという認識が高まって、廃墟ファンを惹きつける要素となります。

4.壁の損傷(落書き)

落書きされた壁がそのままになっている建物は、廃墟というイメージが非常に濃いといえます。もっとも、所有者が自分や知人、あるいは第三者による落書きを黙認したり、公然と推奨したりする例外もあるようなので、過信は禁物です。もっともこうした落書きを公認する建物は反社会的な団体が所有している場合があるので、むやみに近寄らないほうが無難です。

落書きを一種のアートと捉えるか、たんなる悪戯書きとするかは別にして、落書きをしたいという欲求をもった人たちは、そのための大きなキャンパスを求めて探します。この時に格好の標的となるのは廃墟となった建物の壁です。通常人が住んだり使用している建物に許可無く落書きを施してしまうと器物損壊罪という立派な犯罪となります。時々ニュースでも落書きによる被害を報じているのを見たことがあると思います。
落書きをアートと捉えている人たちは、こうしたトラブルを避けるため、見つかっても告発されないような落書きの場所を求め、廃墟にその場所を求める傾向があります。さらに自分たちの「作品」を不特定多数の人に見てもらいたいという心理がはたらくのか、廃墟の壁でも人目につく場所に残すことが多いようです。
悪戯書きが目的の人は、肝試しなどの目的で廃墟に近づいた時に面白半分に残すことがほとんどなので、屋内屋外問わず書き散らすパターンが多いようです。
廃墟に落書きがあることを廃墟ファンがどう感じるかは好みの分かれるところです。自然に生成するものではないので、廃墟の退廃的な雰囲気を好むファンには敬遠されることが多いです。

5.カーテンの破れ

建物によっては決定的な決め手になるのは、窓に掛かっているカーテンの破れや汚れです。現役の建物では破れたまま放置されることが少ないので、廃墟と認定する人も多いと思います。

民家やホテルなど人が寝泊りする建物で、カーテンは日除けや装飾の目的で設置されている場合がほとんどです。カーテンを破れたままにしておくと見た目がみすぼらしく、特にホテルなどではイメージダウンにつながるので、通常では新しいカーテンに掛け替えます。ですからこれを放置してある場合は廃墟である可能性が高いといえます。
ただし、この例外が窓ガラス破損の時以上に多いのもまた事実です。学校や病院では見た目をあまり気にしない傾向があるため、カーテンが破れていても掛け替えのコストを敬遠して、あえて放置してある場合があります。特に学校では生徒たちによって乱暴に扱われるため、破損していても修復が追いつかないなどの事情もあります。作者の経験では、民家でも例外がありました。昔の職場で顧客の家を訪問したら、いくつかの窓から見えるカーテンの裾がボロボロに破れていました。びっくりしてその顧客に話を伺ってみたら、家の中で猫を放し飼いにしており、その猫がカーテンを引き裂いてしまうそうで、掛け替えてもすぐにまた引き裂かれてしまうのでそのまま放置してあるということでした。カーテンだけで廃墟の認定をするのは危険ですね。
カーテンは丈夫な布地で作られており、簡単に破れないモノですが、これも自然に破れたもの、人為的なものに分けられると思います。自然に破れたものでも、人為的な破壊が引き金となっている場合が多いです。訪問者によって窓ガラスが割られた場合、カーテンが雨水など湿気に直接晒されることになります。湿気を含んだカーテンが徐々に腐ってその自重で破れてゆきます。窓ガラスが破壊されない場合は直射日光の紫外線によって布地が劣化して破れますが、この場合は長い年月をかけて、少しずつ破れが進行します。布地が破れなくても、レールに引っ掛けてあるフックが錆びて欠落して、カーテンが窓から外れて床に落ちていることもあります。人為的なものは、建物に侵入した人が直接引き裂くものですが、多くの場合は窓ガラスを破壊するとそれで満足してしまう傾向があるため、窓ガラスは全滅でもカーテンはそのまま残っている廃墟もかなりあります。
カーテンが破れた建物の窓は、独特の雰囲気を醸し出します。割れた窓ガラスと組み合わせて、最も廃墟らしい光景の一つと言えるでしょう。意外にも人為的に破られたものは少ないため、自然に破れたカーテンの姿はもっとも自然な廃墟美だと思います。

6.障子の破れ

カーテンと並んで決定的な決め手になるのは、窓に嵌っている障子の破損や破れです。見た目にインパクトが強いため、ビリビリに破れていたら廃墟と認定する人も多いと思います。

カーテンと同じく民家や日本旅館など人が寝泊りする建物に多用されています。障子は日除けや装飾の目的で設置されている場合がほとんどです。障子を破れたままにしておくと見た目がみすぼらしく、特に旅館などではイメージダウンにつながるので、通常では障子紙を張り替えます。ですからこれを放置してある場合は廃墟である可能性が高いといえます。
ただし、この例外も窓ガラス破損の時以上に多いのもまた事実です。民家の場合、子供が居る世帯ではすぐに悪戯で破られてしまったり、大人でもついうっかり破ってしまうことに加えて、張り替えには手間やお金がかかるため、大掃除の時を除いてあえて放置してある場合があります。障子が破れているだけで廃墟の認定をするのは危険ですね。
障子はカーテンと比べて非常に脆い性質を持った内装品です。特に障子紙は簡単に突いて破ることが出来るので、人為的なことが原因のことが多いですが、自然に破れることもあります。長く直射日光に晒されていると、障子紙の糊が乾燥して、自然と剥がれてしまうことがあります。これは破れというより紙が障子の木枠から脱落した状態です。逆に湿気の多い環境に長く晒されると、今度は糊の成分が水分を含みすぎて薄くなり、障子紙が剥がれてしまうこともあります。ガラスが割られた窓では、障子が外的要因に対して無防備となって破れてしまうこともあります。人為的なものでは侵入者による破壊行為がほとんどです。カーテンに比べて破壊しやすい、破れる音が心地良いなどの理由で窓ガラスと並んで破壊の対象になることが多い内装品といえます。
先述したとおり破れた障子は外から見てもインパクトが強く、廃墟らしさを強調します。破れた障子を放置している家は貧乏の象徴という日本人の先入観もあってとても退廃的なイメージがあります。カーテンとは違って人為的に破れたものが多いとはいえ、割れた窓ガラスと組み合わせて、最も廃墟らしい光景の一つと言えるでしょう。

7.火災の跡

建物は一度火災に遭ってしまうと、よほど小規模で済まない限り、その建物全体が使い物にならなくなってしまいます。原因は消火に使った放水で水浸しになってしまうことと煤を含んだ大量の煙が発生して壁が真っ黒になって修復不能になってしまうことです。どちらも火災の遭った部屋以外にも及び、外観ではそれほどダメージが見られない場合でも使用不能である場合がほとんどです。逆に言えば、外観で火災の跡が見つかった建物は、すでに使い物にならず放置された廃墟であることが多いです。

こういう物件は、火災直前まで普通に使われていた建物と、すでに廃墟化してから不審火などが原因で失火した建物と二通りあります。前者は廃墟らしい雰囲気は全く感じられません。火災の痛々しい跡があるだけで、魅力を感じない廃墟ファンもいるでしょう。後者は元々が廃墟であったのでそれなりの味がありますが、やはり放火による失火が多いだけあって、不快感を示す人がほとんどだと思います。

8.警告看板

積極的なメンテナンスはされていないものの、建物を完全に放棄したわけではない、厳密に言えば廃墟ではない建物があります。ここも含め、多くの廃墟サイトで廃墟として扱われています。しかし、あまり行き届いた管理がされていないことをいいことに、建物に侵入する人が後を絶たない物件があります。管理人の立場なら、侵入者が不審火などを出してもらってはたまりません。侵入者が騒げば、苦情は建物の管理主に来ます。不法侵入に困った管理者は、抑止の目的で立ち入りを禁じる旨の看板を立てることがあります。廃墟で騒ごうと思っていた人たちにとって、侵入をためらわせる効果があるかもしれません。しかし、廃墟ファンにとっては、ためらいの気持ちも起きるものの、ここが廃墟なんだという証明をもらったことになります。廃墟ファンは、現役の建物を廃墟と勘違いして潜入してしまうことを恐れますので…。

こうした看板がある建物は、全国各地にありますが、看板に書かれている内容については真偽が分かれます。警察に通報云々の件は、違法行為を通報するわけですから、本当に実行するつもりでもおかしくありません。実際に警備員をおいたり、定期巡回をしている物件もあります。しかし、碌に柵や塀があるわけではないのに、敷地に入っただけ、近づいただけで通報というのは法的に有効なのかは疑問です。
通報に加えて罰金○万円とか書かれている場合がありますが、これは全くのハッタリです。法的根拠がありません。刑事罰でいう罰金刑は、裁判がないと確定しませんし、そもそもその罰金は管理者に払うものではありません。民事裁判を起こされた場合管理者に損害賠償を支払うことになるかもしれませんが、実際の損害がないと認定されませんし、裁判の手続きなどの手間を考えると現実的ではありません。
監視カメラがある云々の件は、半数以上はハッタリですが、本当に設置してある例もあります。こうした物件の周辺で廃墟とは関係なく凶悪事件が発生した場合、不用意に不審な行動をしている姿が写っていれば、あらぬ嫌疑をかけられることにもなりかねないので、慎重に判断すべきですね。